ハイフンによる複合形容詞
ハイフンによる複合形容詞
複数の英単語を結合させて、1つの複合形容詞を作る場合には、通常、ハイフンが必要とされる。
例えば、特許第6167736号には、「最大待機時間情報」という用語があります。この用語は最大待機時間の情報を意味すると解するので、「最大待機時間の」をハイフンを用いて1つの複合形容詞として”maximum-standby-time”と訳し、「最大待機時間情報」を「”maximum-standby-time information”」と訳すことができます。
ハイフンを用いずに、「最大待機時間情報」を”maximum standby time information”と訳すこともできます。この訳が「最大待機時間の情報」を意味することが明確であれば、この訳も適切と思います。
しかし、そうでない場合には、ハイフンを用いて、「最大待機時間情報」を”maximum-standby-time information”と訳すことが適切です。この訳が「最大待機時間の情報」を意味することは、ハイフンにより明確であるからです。
”maximum standby time information”
→”maximum-standby-time information”
上記の内容は、次の書籍を参考にして記載しました。
書籍:THE ELEMENTS OF TECHNICAL WRITING, Gray Blake and Robert W. Bly
弁理士 野村俊博
二重前置詞
二重前置詞
1つの前置詞とその目的語からなる句を、別の前置詞の目的語にすることができる。
例えば、「・・・のうしろから」は、“from behind …”と英訳でき、「・・・の間から」は、“from between …”と英訳できる。
このような二重前置詞を用いて、例えば特開2002-079336号公報からの下記の抜粋は、以下のように英訳できる。
「波状体10の他端のうしろから第2爪40が第1爪30より高速で図1の右方向に移動し」
“From behind the corrugated body 10, the second nail 40 moves at a speed higher than that of the first nail 30”
※上記は、「表現のための実践ロイヤル英文法(旺文社)」を参考にしました。
弁理士 野村俊博
請求項1の英訳例
請求項1の英訳例
特開2017-63402号公報の請求項1(以下の「」に転記する)を英訳してみた。
「【請求項1】
動画映像を取得し、動体検知により前記動画映像の中から対象物体を検知する検知部と、
前記検知部が前記対象物体を検知した後、前記動画映像中で移動する前記対象物体を追尾する追尾部と、
前記検知部が前記対象物体を検知した後、前記追尾部が追尾した前記対象物体を示す代表画像を作成する代表画像作成部と、
を備える、代表画像生成装置。」
英訳例
- A representative image generation device comprising:
a detection unit acquiring a video image and detecting a target object from the video image by target object detection;
a tracking unit tracking the target object moving in the video image, after the detection unit detects the target object; and
a representative image creation unit creating a representative image expressing the target object, after the detection unit detects the target object.
※「前記対象物体を示す代表画像」の「示す」は、「表現する」を意味すると考えて、”express”と訳した。
弁理士 野村俊博
特許 英語表現 「装置Xが部品Yを有する」
特許 英語表現No.6 「装置Xが部品Yを有する」
以下は、独自の検討内容です。
「装置Xが部品Yを有する」の英訳は、次の(1)~(3)などが考えられる。
(1) A device X comprises a component B.
(2) A device X includes a component B.
(3) A device X has a component B.
(3)ではなく、(1)または(2)を採用するのがよいと思う。
・理由
haveの意味としてconsist ofを記載している辞書(例えばオックスフォード現代英英辞典)もある。consist ofは、限定的な意味「~のみからなる」に解される可能性があるので、このような意味とされ得るhaveは、請求の範囲において(明細書においても)使用しないほうがよいと思う。
弁理士 野村俊博
特許 英語表現 「以下において装置の構成を説明する」
特許 英語表現No.5 「以下において装置の構成を説明する」
以下は、独自の検討内容です。
「以下において装置の構成を説明する。」は、例えば次の(1)または(2)のように英訳できる。
(1) A configuration of the device is described in the following.
(2) The following describes a configuration of the device.
「以下において、~を実行する装置の構成を説明する。」のように「装置の構成」を修飾する語が追加され、「装置の構成」を含む句が長くなる場合には、(2)のほうが読みやすいと思う。
また、次の(3)のような”will”を用いないほうがよいと言われている。技術を説明する文章では、通常は”will”は用いないほうが好ましく、”will”は不要であるため。
(3) A configuration of the device will be described in the following.
弁理士 野村俊博
特許 英語表現 「変換された信号」
特許 英語表現 No.4 「変換された信号」
※以下は独自の見解です。
「装置Qが信号Aを信号Bに変換する」は、次の(1)のように英訳される。
(1)A device Q converts a signal A into a signal B
この(1)を前提とした次の和文Xを検討した。
和文X:「装置Qは、変換された信号Bを出力する。」
和文Xの英訳は、次の(2)のようになる。
(2)The device Q outputs the converted signal B.
しかし、次の理由で(2)が正しいか疑問に思った。
理由:”convert”の目的語は、上記(1)では”signal A”であるので、”the converted signal A”という表現はあっても、”convert”の目的語でなく前置詞”into”の目的語である信号Bについて ”the converted signal B”とするのは不自然に思えたからである。
そこで、和文Xの英訳として、次の(3)を検討した。(3)では、上記の前置詞”into”を用いており、”into”に伴う”signal A”等を補っている。
(3)The device Q outputs the signal B into which the signal A has been converted. (装置Qは、信号Aを変換した信号Bを出力する)
しかし、(3)は表現が冗長である。
そこで、次のように検討した。信号Bは信号Aから変換された(the signal B is converted from the signal A)と考えれば、上記の前置詞”into”にとらわれることなく、信号Aから変換された信号(the signal B converted from the signal A)と考えることができる。
したがって、「変換された信号B」は、“the signal B converted from the signal A”のように” from the signal A”を省略して、単に”the converted signal B”と表現してもよいと思う。
そうすると、和文Xの英訳は、上記(2)でよくなる。
(2)The device Q outputs the converted signal B.
弁理士 野村俊博
特許 英語表現 「~した回数をカウントする」
特許 英語表現No.4 「~した回数をカウントする」
「~した回数をカウントする」の英語表現
以下は、独自の検討内容です。
次の日本語は、(1)~(3)のように英訳できる。ただし、受信機が信号を受信し、受信機とは別の計測装置が、この信号の受信回数を計測するという背景があるとする。
英訳対象の日本語:「信号を受信した回数を、計測装置がカウントする。」
(1) The measuring device counts the number of times a signal is received.
(2) The measuring device counts the number of times of reception of a signal.
(3) The measuring device counts the number of times of signal reception.
意味がより明確に伝わるのは、(1)と(2)である。語数を減らしたい場合には、(3)のようにも英訳できる。"signal reception"は、「信号受信」を表しており、これを用いた(3)も上記の日本語の内容を表しているからである。
次の(4)のように英訳した場合を検討する。
(4) The measuring device counts the number of times of receiving a signal.
この場合、動名詞"receiving"の意味上の主語(すなわち受信機)は、文の主語"measuring device"と一致しないので、不自然になる。そのため、(1)~(3)の方がよい。
弁理士 野村俊博